芸工コンペ2021 結果発表!!

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こんにちは!芸工アプリ事務局です。
7月初頭から作品の募集を開始した芸工コンペ2021。ついに結果発表です!

作品の応募数は、

グラフィックデザイン部門:11
イラスト部門:26

となりました。たくさんの応募、ありがとうございます!

芸工コンペ2021

芸工コンペ2021では、

『壊す』(グラフィックデザイン部門)
『窓』(イラスト部門)

というテーマで作品制作をおこなっていただきました。参加者には、

  • 最優秀賞(賞金1万円)・・・最も優れた作品
  • 優秀賞(賞金5千円)・・・次に優れた作品
  • 特別賞(賞金3千円)・・・審査基準以外の点で優れた作品
  • 新人賞(賞金3千円)・・・1年生の中で最も優れた作品

という4つの賞が与えられます。作品の審査は、芸工にゆかりのあるビッグな方々にお願いしました!
審査員の面々など、コンペの詳細はこちらの記事で確認してみてください↓↓↓

【8/25締め切り】芸工コンペ2021 開催!!

2021年7月5日

結果発表 〜グラフィックデザイン部門〜

最優秀賞

『Which?』
ゾウ

自宅で過ごすことが増えた現在、「壊す」ということについて考えると、やはりコロナに壊された今までの日常が想起されました。しかし、今まで通りではないこの日常を壊しているのは自分たちの行動もではないかと思います。自分たちの身勝手な行動もコロナ渦において日常を壊しているのでなはいでしょうか。「国の偉い人が感染対策を考えない行動をしているから自分たちもしていい、そんなことはない、自分たちの行動を見つめ直してみろ、自分たちも日常を壊している。」というようなことを表現しました。多角形は日常や未来、それを握る手は私たち、レモン搾り器はコロナウイルスやコロナ渦として、自分たちも日常を壊していることを表現しました。

目を見張るような強いビジュアルと、そこに込められたメッセージに強いテーマ性を感じました。また図と地を用いた錯覚的表現も印象的でした。

モチーフの掴み方が面白いと思いました。色彩もレトロな印象もありながらも一部グラデーションによる表現も同居しており、興味深かったです。構図も大胆で力強さを感じます。 (このままでも十分魅力的ですが、もっと欲を言えば、なぜそのモチーフを選んだのか、さらにそれが効果的に伝わる色彩やトーンを探ってみるとどうかなと思いました。タイポグラフィの入れ方も抜きで入っていたりしますが、そのあたりの意図なんかも伺ってみたいなと思いました。素敵な作品をありがとうございます。)

タイポグラフィや色調をはじめ絵作りに気配りを感じられ、まとまりがある。
手・多面体・搾り器の関係性がそのままコロナ禍・我々の生活上のリスキーな行動・日常生活の関係性へと、スムーズに結びつきにくい印象も受ける。関係性を整理して、組作品などでレモンを搾る様子・その関係性の図示・それをコロナ禍に例えると…?というように段階的に問いかけるのも手かもしれない。
押す手、搾り器、どちらがレモンを壊しているか?「which?」が何と何を指すのか明示されると、直感的に理解しやすい。手の演技をより力任せにする、しぼり器と手の対立関係・あるいは類似性を明示するなど力関係が整理できるといいと思う。

優秀賞・特別賞(ダブル受賞)

『Marine pollution』
momo

私たち人間による環境破壊、特に海洋問題を表現しました。 汚れた海をリアルに表現するポスターはよく見られますが、 この作品では、ピクトグラムを用い、ゴミと魚の個数・割合を強調するグラフィックを目指しました。そのため、あえて水平ラインの階層を作りつつ、直線と曲線によるコントラストを楽しみました。 また、「壊す」や「環境問題」には、暗く怖いイメージがありますが、一見そういった雰囲気を感じさせない色彩とグラフィックにし、生活環境に馴染むよう意識しました。 文字に関しては、ピクトグラムとの調和を目指し、下部のテキストは、海の中をイメージして少し踊らせました。 最近普及しているエコバックや紙ストローが、何のために必要であるかを考え直すきっかけの一枚になると嬉しいです。

海外のペーパーバックの表紙のようで絵にまとまりがある。「未来の海では魚とペットボトルが一緒に泳いでいるかもしれない」というシチュエーションの場合、ペットボトル、魚の形態の類似性を強調できれば視覚的に面白くなると思う。機械的な配置は装飾的なニュアンスに一役買ってはいるものの、あまりに直線的に並べすぎると味気ない印象がある。やや皮肉めいた表現にはなるが、いっそ魚とペットボトルが一緒になって泳いでいてもいいと思う。イラストだけで説明できている点はとてもいいと思う。その分コピーが絵と同じ内容をなぞってくどく見えているので、もっと言葉を飛躍させていいと思う。色画用紙で実際に作ってみても面白い絵になるかもしれない。

ペットボトルと魚の対比がわかりやすくて意図が伝わります。色数を減らして線の数も減らすともう少し、ビジュアルメッセージの伝わるスピードが増してきます。

新人賞

『不可逆』
しげ

キーボードのK,O,W,A,S,Uのキーを壊して投げつけ、ガラスを割る少年を描きました。この作品内で壊れているものはキーボードとガラスとガラスに映った少年の像です。激昂してものを壊してしまった経験がある人は多いと思います。怒って物を壊したときに感じる、自分の心が荒むような、内面にひびが入るような感覚を少年の割れた像で表現しました。また、ガラスがひび割れた「瞬間」を描くことで、(壊す前なら引き返せるけれど)一度壊したものと壊したという事実は戻せないということを強調しています。戻せないということは、後悔しても遅いということです。

壊してしまったものへの後悔、不可逆性のようなものは作者の言うように誰しも感じる瞬間だと思います。
コンセプトや瞬間を描く表現に強く惹かれながら、なぜこの少年はキーボードを投げているのか。状況が少し掴みづらいようにも感じました。(一方で色々な想像ができたことも確かです。) もしかすると何か一言、コピーを入れてみるとさらに良くなるのかもしれないなと思いました。ありがとうございます。

審査員からの総評

全体的に、表現方法がやや紋切り型に感じました。芸工ならではのグラフィックを期待します。

グラフィックデザインは、映像作品のように動くことはなく、またプロダクトのように立体的でもなく、さらにWebサイトのように縦に長いものではありません。限られたスペースの中で作る静止した平面のデザイン、それがグラフィックデザインです。
限られたスペースの中で最大限の魅力を引き出さねばならない、グラフィックデザインはいわば100m走のような究極のデザインです。 と、グラフィックデザイナーの佐藤卓さんはおっしゃっていました。
もちろん目を見張るような視覚表現や色彩・構成・タイポグラフィなどの知識も重要です。でもそれはデザインに携わっていればある程度はできるようになります。
だからこそ今回はこの制約された環境の中で「壊す」をどのように解釈し表現したかといった「テーマ性」に最も重視し、評価しました。
単に「壊す」といっても人それぞれで全く違った観点の解釈があり、十人十色のグラフィックデザインを見ることができました。
普段の生活で何気なく見ているグラフィックも、その奥に隠された意図や背景を少しでも探ってみると面白いかもしれません。

全体的にビジュアルメッセージのキーワードが多すぎて、伝達を受けとれません。ワンビジュアルワンメッセージのコミニュケーション伝達の基本とエレメントのオリジナリティーの高品質化を期待したいです。

荒削りながら自分の思い・創作意欲に正直な作品が多く、いい刺激になりました。ああだこうだとコメントを付けていますが、「優等生的に整えるなら」という前提でのものです。素直に反映させるよりむしろ反骨心で好きに突っ走ったほうが気持ちのいいものができるかもしれません、応援しています。 コラージュや既存書体をメインに据えたものが多いのが気になりました。色々と制作に便利な素材があふれる昨今ですが、自分で描いて作って刷って撮って、そういったプロセスに自分らしさが蓄積していけば出来上がる頃には自分らしい説得力のある作品になっており、結果的にはお得です。特にアイデア一本や簡潔な表現での勝負では差別化のための重要な戦略の一つになります。
そして、全体的にルックスのディテール、クオリティを上げていく必要があると思います。たくさんの作品に触れるのが近道だと思っています。芸工の図書館には希少なデザイン書籍や、1953年から続くデザイン誌『アイデア』もずらりと揃っています。また、映画は演出・構図・色彩・タイポグラフィ・広告・ファンメイドポスターなどなど多岐にわたる目線で意匠を読み解くことができ、おすすめです。

まずは応募者の皆様、素敵な作品をありがとうございました。 様々な「壊す」を見ることができ、僕も楽しませて頂きました。
どの作品もエネルギッシュで力のこもったものばかりだと思いました。一方で、個人的な印象ではありますが、全体にやや要素が多く、伝えたいメッセージがスッと入って来づらい作品も多かったように感じました。 難しいことですが、伝えたいことをシャープにし、それを伝えるにはどんな表現が適切かをもっと突き詰めていくとより魅力的なビジュアルになっていくのではないでしょうか。
・・・と、ここまで「何様やねん!」とお叱りを頂きそうなコメントをしてしまいスミマセン。大前提として、どの作品にも魅力がありましたし、ちゃんと個性も立っていて素敵な作品ばかりだったと思っています。 加えて、そもそもこうした機会に積極的に挑戦している皆さんの意識・行動力が素晴らしい。今後もぜひアンテナを貼り続け、チャンスを逃さず果敢に挑戦していってください。今後ますますの成長とご活躍を期待しています!

結果発表 〜イラスト部門〜

最優秀賞

『窓の坩堝』
福田慶一朗

家の窓から外を見ると、他の建物の窓が無数に見える。「窓」を通して見える光景は、家の中、つまり、内側から見た場合と、外側から見た場合では、その見え方は大きく異なる。もしも、他人の家や、建物の窓を覗いて見たときには、今の自分の生活とはかなり異なった、見たことのない光景が見えるはずである。ここで言う「窓」というのは建物の壁にはまっている、物理的なものに限定しているわけではなく、現代では、漫画や本や映画、Twitter上のつぶやきやInstagramに投稿された写真、YouTubeの動画を通しても、色々な世界を見ることができる。何か違う世界が見える存在という意味では、これらも「窓」の一つということができる。 この作品は、「窓」という存在を通して見える、異なったそれぞれの世界の様子、および、その「窓」を開けることで、それらが干渉しあい一つの世界を作り上げる様子やその様子を見る、第三者の眼を描いたものである。

複雑で騒々しい相互干渉の様子を、原色を多用した強いタッチで描き切っている。絵の内容はもう少し詰められそうだが、全体としては勢いとまとまりがあって気持ちが良い。

独特な絵そのものが大変魅力的で、着眼点もよくすばらしい。

パッと見た瞬間一番個性を感じました。作者が好きな世界感が線から滲み出ていて魅力的でした。またテーマと作風がうまく調和していてよかったです

優秀賞・新人賞(ダブル受賞)

『夏の終わり』
けろ

夏の花火大会に行かず、祖父母宅の縁側の窓辺で一人孤独に過ごしている少女を描きました。一緒に花火大会に行く予定だった友達が急用で行けなくなったため、少女は花火大会が始まる前に屋台から家に帰り、切なさや悲しみがこらえきれずに縁側に突っ伏す…というようなストーリーをイメージしています。花火を直接描かず、窓に反射した花火を描くことで、少女にとって花火大会が窓の向こうの遠い存在になってしまったことを強調しました。ストーリーを表現するために、友達のために二人分買ったりんご飴、急用で行けなくなったという連絡がきたスマホといった小物も随所に描きこんでいます。見る人に「なぜこの女の子は泣いているのだろう」という疑問を持ってもらい、各々がその涙の理由や物語を想像してもらえるような作品を目指しました。

コンセプトに書かれているように、窓越しに花火を見るという表現ではなくて反射で映すことで、窓は開いてるのに、ほんとにもう女の子には関係ない世界になったんだなということが伝わってきてものすごく切なくなりました。

窓ガラスに映った花火が映画のように動いて見えました。涙で窓がくもりそうです。

特別賞

該当者なし

審査員からの総評

描くのが好き!という想いが伝わる作品が多く、楽しく審査させていただきました。もったいないなと思ったのは、描きたい気持ちは強いのにコンセプトがあいまいな作品、逆によく考え込まれているのに絵に説得力がない作品、難しく書こうとしすぎて伝わらない説明文です。友達や家族に絵や説明文を見てもらってちゃんと伝わるか確かめるのが良いでしょう。褒められれば継続するモチベーションにも繋がりますので、ぜひ伝える技術も大切に磨いてください。

僕が入学したのが、ちょうど芸工大が九大と合併した年で、僕より上の先輩は芸工大生として入学した人たちでした。僕のさらに下の代が入ってくるたびに先輩から「九大の試験を通ってきた人はちゃんとしている。芸工がちゃんとしてきている。」と言われました。今回の審査員をすることが決まったとき、芸工なのでいかにふざけるかを競うコンペだと勝手に思っていて「技巧点なんて全員0点でなんぼだろ」と思っていたのですが、いざ見てみて「多摩美!?」と叫びました。全員絵がとてもうまかったです。なので逆に、個性や新規性を飛び道具的に出しづらいので、うまい中でも光るもの、世に出たときに埋もれない武器、をくみ取りやすかった作品が高得点になりました。ただあくまで全作品比較して数字を分配するので点差がついていますが、すべてとても良い作品でした。

全体として、色合いや構図を工夫し、よく描きこんだ力作が多かったです。テーマの解釈も多様で、とても興味深かったです。
一定のレベルがあると認めた作品の中で、特に評価している作品には、その人にしか表現できない独自性や世界観があります。
応募者のみなさんには、これからも、自分がよいと感じるものを信じて、のびのびと表現してほしいと願います。

窓というテーマのもとで26通りの捉え方があり、その思いを噛み締めながら拝見しました。一つの答えがあるわけではないので今回のコンペで自分なりの捉え方、表現方法を大切にこれから育てていってほしいと思いました。いろんな人に見てもらい意見をいただくことはとても大切だと思いますので今回の結果をまず受け入れてまた何年後かにこのコンペテーマを振り返って同じテーマで描くのも面白いと思います。とても面白い作品を見せていただきありがとうございました。

流行り物や誰かがいいという表現ではなく、自分が心の底から愛するもの、美しいと思うもの、今までの人生の中で少しずつ集めてきた大事なものを思いっきり作品にぶつけてください。荒削りでいいし、うまくまとまっている必要もないし、歪んでてもいいんです。他人に何を言われても構わない私はこれが好きなんだ、という強い気迫は必ず見る人を惹きつけます。世の中や身近な人に忖度して、小器用に無難にうまくまとめてしまうのが一番つまらないです。表現に正解はありません。自分の足元を深く掘り下げて皆さんにしか描けない世界をこれからも磨き続けてください。

※審査員からの作品へのコメントは一部を抜粋したものです。

終わりに

芸工コンペ2021、いかがでしたでしょうか?

芸工コンペ2020に引き続き、今回もたくさんの素晴らしい作品を応募していただき、素晴らしいコンペになりました!

このコンペは、「芸工生に「作品」を通して社会人とつながってもらい、進路の選択肢を広げて欲しい。」という思いで開催しました。参加してくださった皆さんには、このコンペを足掛かりに自分の作品をより多くの人に向けて発信して、芸工内だけでなく芸工の外でも積極的に活動をしていって欲しいです!

悔しい思いをした方もいらっしゃると思いますが、その経験と気持ちを、他のコンペへの参加など次の活動に向けて生かしていって欲しいと思います。
このコンペが、参加者の皆さんの進路や創作活動にプラスに働くようなイベントであったならば幸いです!

希望者の皆さんには点数開示・順位開示を順次メールで送信いたしますので、お待ちください。
芸工アプリでは現在、応募された作品の一部のWeb上での公開、入賞した作品の展示などを準備しております。今後の情報発信をご期待ください!

芸工アプリのアップデート/ダウンロードはこちら

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