みなさんこんにちは、芸工アプリ事務局です。
突然ですが、芸工の大学院ってどんなところかご存知ですか?
特に3年生は「就職」だけでなく「院進」という進路も考えるので、身近な話題だと思います。
しかし……
・就職か院進か悩んでいるけど、だからといって院で何をするかイメージできない
・芸工の大学院という実態が掴めないから、大学院を進路として選択できない
そんな不安を抱えている方がたくさんいるのではないでしょうか。
そこで、今回から始まる新企画!
学祭やサークルを終え、ひっそりと表舞台から姿を消した芸工院生や院卒業生に、当時の進路選択の不安や研究の面白さなどを赤裸々にインタビューする企画です!
先輩たちも、あんな悩みやこんな悩み、さまざまな葛藤や期待を抱えて選択した「院進」という道。悩んでたのはあなただけではないんです。先輩のアドバイスを聞いて、ひとつの進路の参考になりましたら幸いです。
第1回目は 環境・遺産デザインコース修士1年、日高杏香(ひだかきょうか)さんにインタビューを行いました!
【プロフィール】
日高杏香(ひだか きょうか)
九州大学大学院芸術工学府芸術工学専攻環境・遺産デザインコース修士課程1年。環境心理学分野を研究する大井研究室に所属。現在は飲食空間についての研究を行っている。
空間デザインに興味があり、最近のマイブームは自分の好きなものについて分析すること。好きな飲み物は、カフェラテ。
Q.1 日高さんの所属研究室、大井研究室について教えてください。
大井研究室の専門は環境心理学です。環境心理学とは『ある空間にいる人の心理について』の学問です。その中で自分の興味があることを研究できます。
例えば照明や公園、住宅など、テーマの選択は本当に人それぞれです。『人がどう感じるか』についての研究なので、実験や調査が多く、そのための機材やノウハウは十分そろっていると感じてます。いい研究室です(笑)。
研究テーマは?
Q.2 日高さんは何のテーマを研究しているんですか?
私のテーマは「カフェ」です。今は卒業研究で発表した『カフェ空間における家具と開放感の関係に関する研究』の続きを行っています。
そもそもこの研究は、模型を使って、家具の量や形態の変化によって、空間の印象がどのように変化するのかを調べることを目的とした研究だったんですよ。でも卒業研究は時間が短くて、自分が納得する結果が導き出せなかったので、その分析方法の再考から行っています。
現在は、空間にさらに人を配置して、家具と人が組み合わさったときに空間に与える印象の変化を研究しています。
なぜ環境心理なのか?
Q3. 環境は制作のイメージが強いのですが、環境心理の大井研究室に入ろうと思ったのはなぜですか?
後で詳しく言うけど、私はデザインするのが嫌だなと思ったんです。
学部の頃は形っていう外観のデザイン、いわゆる建物の「外側」の設計をずっとやるんですけど、私は「外側」の設計に疲れてしまって。でも芸工に入学した時からずっとカフェの設計がしたいとは思ってて。そんなとき、結局人がいるのって建物の中じゃん、って思ったんです。中でどう過ごすかが一番大事だと思って、建物の「内側」の設計がしたいなって思いました。
最初は内装の、特に照明に興味を持って、3年生のインターンで照明設計の事務所に行きました。でも照明だけ!ってなると扱う領域が狭すぎて。「これは無理だ仕事にはできない!」と思いました。じゃあもうちょっと幅を広げて、内装全般や企画をする仕事がいいな、と。そういう類の研究をやってるのが大井研究室でドンピシャだったので、ここに来ました。
研究の大変さ
Q.4 大井研究室での「内側」の設計は「外側」の設計とは異なる大変さや辛さがありますか?
精神的に辛いことはないですね。実験やってて体力とか、物理的にきついことはあるけど、それは計画を立てればそれで済むので。
辛いことではないんですけど、心の中に引け目はあるかな。周りの人たちが、みんなどんどん就職していくのに、私大丈夫かな、って。浪人してて、ただでさえ一年遅れてるのに、さらに院行って留学もしたくて……え、就職する時年齢いくつ!?みたいな(笑)。
そういう思いはやはり片隅にあるんですけど、それだけですね。
研究のやりがい
Q.5 研究には悩みを覆す達成感や感動があるということですか?
はい!研究やってて、自分はこんなことできるんだ!って思ったんですよね。
例えば、他の人の論文読んでるときは、「すごい、自分にはこんなことできない」って思ってました。でも、実際に実験してデータをまとめて分析するとちゃんと論文の形ができてきて!
自分で興味を持って、「これがやりたい!」って決めて段取りを組んだら、ちゃんと一つの成果として出るんだなと思って、自信に繋がりました。
年齢のことや前進するペースはもちろん気になるけど、自分は大器晩成だと信じたいです。
最初から院進希望?
Q.6 日高さんは昨年の卒業論文で芸術工学会奨励賞を受賞されています。院進を視野に入れたうえで研究していましたか?
いえ。もともと院進するつもりはなくて、就職しようと思ってました。
さっきちらっと言ったけど、学部3年生、就活のときに、建築でデザインすることに限界を感じてしまったんです。私は意匠系は無理かなって。そんなとき、研究し始めたら楽しくて、だったら院に進んでもいいなと思ったのがきっかけです。
私は、デザインする人はすごいセンスがある人だと思ってます。でもそのセンスある人に自分はなれないから、理論があるデザインがしたいと思いました。学びを深めなければ社会に出れないと思って、院で理論の土台をつくって、自分に自信をつけようと思いました。
もう一つの理由としては、行きたい企業があって、ちょうど大井研究室の先輩が院に行ってその企業に就職してたので、私も院に行ってから就職したいと思いました。
大学院ならではの魅力
Q.7 就職も視野に入れていた日高さんから見て、院ならではの魅力ってなんだと思いますか?
就職した周りの友人を見てて思うんですけど、就職したら企業のガイドラインに沿ったことしかできないと思うんですよ、自分の時間も少ないし。
でも院だったらこれやりたい!ってことをパッと始めることができる。反対に、やめようと思ったらパッと止めることもできるわけですよね。全部自分の意思で決めることができる。
自分が何もしなかったらそりゃどんどん堕落していくけど、やろうと思い立ったら幅広くなんでもできます。それってすごいことですよね。まだ大事なのはお金じゃないです(笑)。あとは授業もすごく面白い!
大学院の授業はここが違う
Q.8 院での授業は学部の頃とは違いますか?
院の授業と比べると、学部の授業は物足りない!と思っちゃう。学部時代は自分で深く考えて意見を言うことはなかったけど、院の授業では考えて発言することが多くて。院進してる人って、みんな自分の考えをしっかり持ってるんですよ。私も、ただ院に進んだだけなのに、深く考えられるようになったと思います。
学部時代よりも授業がごちゃ混ぜになるから、違う学科の授業も取れて出会いが増えて、すごい楽しいです。授業に関してもすごい自由なんですよね。例えばグループワークしてるとき、知ってることがみんな違うから、異文化交流みたいになりますね(笑)。
悩める後輩へメッセージ
最後に日高さんから、進路に悩んでいる後輩に向けて、メッセージをお願いします。
マイナスなことを言いますが、正直、院に来たら負けというイメージがあると思います。就職できなかった人が来た、みたいな。でもそんなことは決してなくて。目的があってやることは、どんなことでも達成感を得ることができると私は思います。
例えば私はいま論文を書いていますが、学会に出せば、就活のときも自分にとってプラスになります。学部では卒論は書けるけど、論文は基本書けないので、学術的な点に関しても強みになると思います。
ゆっくり人生考えましょう!
おわりに
日高さん、赤裸々に語ってくれて、本当にありがとうございました!
日高さんの大学院生活が非常に充実していることがわかりました。そして同時に、抱えている不安についても深く話してくれて、進路選択の参考になりました。
特に外側のデザインに疲れたという、非常に踏み込んだ不安には、同意見の人もいるのではないでしょうか。自分の人生だからこそ、時にはゆっくりと人生を考えることも大事ですね。2020年の終わりに、もう一度自分の好きなことや嫌なこと、裸の感情を振り返ってみてはいかがでしょうか。
本企画、『だからわたしは院にきた!』は来年度もインタビューしがいのある院生をガンガン発信していきます!大学院に少しでも興味を示していただけると幸いです!
それではみなさん、良い年末をお過ごしください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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